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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2010年 02月 15日
![]() 数日前のFT(ファイナンシャル・タイムズ)に How Toyota engineered its own downfall と題された記事が載っていた。その内容もさることながら、私にとってもっとも衝撃的だったのは、冒頭に引用された豊田社長の記者会見での発言。外国プレス向きの記者会見で氏が語った言葉を、新聞の記事からそのまま抜粋するならば Believe me, Toyota's car is safety. But we will try to increase our product better 記者は、「普通であれば、誰かの英語の下手さをからかったりすることは、決して許されないことだ」と前置きした上で、「しかしながら、アメリカでMBAを取得した豊田氏が、完璧な英語の謝罪文をたたきこまれていなかった、という事実そのものが、今回のリコール問題に対するトヨタの”二流の”対応を雄弁に物語っている」と書いている。 たまたま私はスイスに住んでいるので、主に金融関係の日本のビジネスマンはけっこうたくさん知っている。しかし、その多くの人が、まずは痛々しいほどに英語が不得手で、しかも、いや、それがゆえに、世界の事情にあまりに疎いことに、暗澹たる気持ちになることがしばしばある。世界の事情に疎いというのは、なにも政治情勢とか金融システムといったことばかりとは限らず、グローバル化が進んだ現在の世界における、ビジネス上の共通認識とか、プロトコールといったことをも全部ひっくるめた「疎さ」である。 日本のこうした状況を、国内では「日本列島ガラパゴス化」みたいな表現で指摘する向きもあるが、巷に指摘されている以上に、問題は根深いということを、たとえば今回のトヨタ事件は非常によく象徴していると思う。 かつて高度成長期には、メイドインジャパンの製品は、その質の高さ(最初は粗悪のコピーだったのが、頑張って改良を続けたおかげで、質の高さを誇ることがいつしか普通になっていた)と、低価格によって、まさに世界を席巻した。「うなずくばかりで、なにをいっているのかよくわからない営業マン」とか、「イエスといったくせに、本当はノーを意味していたらしい手ごわい交渉相手」といった評によく表れているように、相手国のビジネスマンがお手上げ状態になる、それこそ問答無用・カミカゼ突撃隊的戦略で、なんとか世界に市場を開拓したまではよかったが、その後のバブル崩壊以降、日本はどんどん世界の潮流からはずれ、遠海を一人いかだで漂ってるような存在に成り果ててしまった。そうこうするうちに、かつてはアジア一人勝ち状態だったのが、中国、韓国、シンガポールなどに多くの分野で追いつかれ、そして追い抜かれ、ふと気づいたら、「あれ?」というポジションに。 問題の根源の一つは、いまさらながら英語であると、つくづく思う。水村美苗の「日本語が滅びるとき」に書かれる英語帝国主義の中での日本語、日本文学の存続の危機という視点にはひたすら共感する私だが、それはなにも、英語ができないままでもオッケーということとは全然違う。かつて、私が留学した80年代のフランスでは、英語をしゃべる人はまだ非常にまれで、「話せてもあえて話さないフランス人」という嘘か真かわからぬ評判もかなり幅を利かせていた。しかし、今どきのフランス人、それもちょっとしたビジネス業界でそこそこのポジションにある人で、英語で仕事が出来ない人などほとんどいない。中国人だって、韓国人だって、そりゃ発音などはひどい場合もあるが、それでも彼らは世界のどこへでも出かけていって英語で話をつけてくる。アメリカのアイビーリーグ系大学など、今や中国や韓国などからの優秀な留学生抜きにはそのキャンパス風景が成り立たないほどでもある。 日本が必要とする英語とは、巻き舌多様のオウムの口まね的雰囲気イングリッシュなどではなく、それを使って意味ある内容を話し、読み、書く力。発音なんてどうでもいい。でも構文はちゃんとしてなくちゃいけないし、論の組み立てもちゃんとしてなくちゃいけない。お子様のイングリッシュスクールは、その意味ではなんの解決法にもなっていない。中高生のお受験英語も、ないよりはましだろうが、大した役にはたっていない。むしろ大学生や大学院生こそ、論文を読み、そして自らも論文を書き、そして学会で発表し、といった「本当の勉強を通じた英語の取得」に励んでもらいたいし、大学のシステムもまた、そうした方向でのサポートをするべきだと思う。理数系だけでなく、むしろ社会科学系の学生たちにこそ、この分野をうんとうんと強化してもらいたい。 「日本株式会社」自体は、GNPその他の指標のどれをとっても、本当の意味での世界一になったことはない。でもトヨタは違った。トヨタは本当に世界一のカーメーカーに、ともかくはなったのである。ガラパゴス・ニッポンにおける、数少ない頼みの綱、世界のトヨタは、日本そのものを両肩に背負う巨大な組織である。だからなおさらのこと、今回の失態(別にトヨタ社長のお粗末な英語という点に限らず、リコール問題への対応そのものという失態だが)は痛く、悲しい。 それともう一つ、日本がルーザーに成り果てている理由の一つに、外国からの投資をちっとも呼び込もうとしない、そういう鎖国的な状況がある。ビジネスのど素人の私がとやかくいうのも気が引けるが、日本は海外から投資しようとしている人にとっては、あまりにハードルが高すぎるのである。それは言葉のハードルであったり、文化的なハードルであったりすると同時に、役所が課すロジスティックなハードルでもあり、とにかく支社一つ立ち上げるにも、銀行口座一つ開けるにも、駐在員を送り込むにも、制限が「世界スタンダード」を大幅に超える仕方であっちにこっちに立ちはだかっているのである。 ・・・・と、こういうことをあれこれ考えていると、非常に気持ちが暗くなってくる。 「スイスでは、こういうふうにやっておりますから」 そんなふうに煙に巻くだけで 「ほほう、そうですか」 と感心しちゃうような世界ボケビジネスマンに国を任せておいちゃだめだ。 もちろん、中国に一族郎党連れていって要人と全員に握手させるような土建屋的メンタリティの「外交」で悦にいってるような政治家に国をまかせおくのもだめだ。 でも、じゃあどうすれば・・・。それは私にもわかんない。
by michikonagasaka
| 2010-02-15 20:54
| 考えずにはいられない
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