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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2010年 05月 11日
先日、友人宅に食事に招かれた。そのときの客の一人Aは、20年あまり、チリ、ブラジルを中心に南アメリカの国々に企業駐在員として在住した後、昨年、母国スイスに戻ってきたばかり。その彼が、ここしばらく、大きなプロジェクトで何度かアフリカに長期出張する機会があったという。
「・・・で、どうでした、アフリカ?」 「は~っ」と大きく深いため息をついたあと、彼はいう。 「失われた大陸。そう、本当に、失われた大陸になってしまったよ、あそこは」 その声があまりに絶望のトーン一色なので、食卓の面々一同、身を乗り出し、 「それはいったい、どういう意味・・・?」 と一斉にたずねる。 以下、彼の話を要約するとこんなことになる。 アフリカは歴史的に豊かな自然資源に恵まれた大陸であり、それがゆえにアフリカの歴史は、不幸なことにこの「豊かな自然資源」を搾取され続ける歴史となった。植民地時代の終焉により「政治的搾取」は、一応、終結したが、「経済的搾取」のほうは、減るどころか、ますます増える一方。だが、西欧先進国の多国籍企業、あるいは旧宗主国系列の企業による「経済的搾取」は、それでもまだ、一応は「かすかな民主主義・人権意識」のおかげで、あからさまにひどい搾取や人権侵害的な行いは、自主規制的な制限をされていた。 ところが、ここ数年で、アフリカ大陸における海外投資の圧倒的トップに躍り出てきたのが新興経済大国の中国。アフリカ各国のインフラ整備を中心とした「開発援助」という形で、まずそれははじまった。中国企業が次々やってきて、道路をつくる、病院を建てる、学校をつくる、飛行場をつくる、ダムをつくる・・・。 彼らのすごいところは、まず、驚くべき順応力。言葉を短期に習得し、現地の習慣をそこそこ学び、そして指導者層中枢にぐわ~っと入り込む。そこで弁舌巧みに、そして押し強く、交渉をまとめ、契約をとる。 さらに彼らは、これまでの西欧企業と違って、現地労働者を使わない。トップばかりでなく、道路をつくる工夫たちも、いっせいに中国から派遣する。この労働者たちがまたすごい。昼夜を問わずに低い賃金でもくもくと働く。大部屋雑魚寝だろうが、衛生状態が悪かろうが、決してへこたれない。結果、アフリカ人の労働者を使った場合にくらべ、作業は格段に迅速に高いクオリティで進み、立派な道路や工場などが次々と誕生。 その脇で、当然、現地の雇用は進まず、地元では、もともとひどかった貧困がさらにひどくなる。 中国業者に入札させた地元の有力者、国の政治家たちには、すばらしい賄賂が贈られる。 そして、こうした「開発援助」の見返りに、中国は、これらの国々の魅力的な自然資源の開発権、採掘権などを次々に得ていく。 まさに中国とアフリカ諸国の指導者たちの完全なる二人勝ち。残されたのは、哀れな現地の人々、そして、「なんとかアフリカに未来を」と懸命に頑張るNGO、さらにいえば、これまでアフリカでビジネスを展開してきた欧米諸国の企業も、負け組みグループの立派な一員。 皮肉なことに、アフリカ諸国の「指導者たち」の多くは欧米で教育を受けている。だが、欧米の教育制度の根幹にある「人権意識」の部分は、彼らは軽くスルーして、私腹を肥やし、既得権を守ることにしか関心がない。 一人勝ちして突っ走る中国にも、もちろん西欧諸国がスタンダードと定める「普遍的な人権意識」などというものはない。自分たちのビジネスの繁栄、国家の繁栄は、アフリカのますますの貧困化、没落と表裏一体などという意識は微塵もない。これまで欧米系の政府系開発援助やNGOの取り組みなどが、ほそぼそと続けてきた努力は、確かにたいした成果を上げることはできていない。だが少なくとも、それは一応、「アクティブにアフリカをぶっ壊す」意図とは程遠いものだったし、なんとか少しでもマシになるようにと(植民地化した罪の意識に部分的に突き動かされ)努力は続けてきたのだ。 が、ここにきて、こうした長年の努力は、中国の覇権の前にあっけなく、崩れ去ってしまうだろう。 ・・・そうAは、自らのシナリオを描き、ふたたびため息をついた。 「アフリカのとある、例外的に正直で真摯な政治家と話をしたんだが、彼がいうのには、この中国の進出を食い止める当面もっとも有効な手段は、移民法の改正だろう」 つまり、中国からの短期労働者の入国を厳しく制限するような法制度を即刻制定しない限り、アフリカに将来はない。非常に近い将来、それは本当の「失われた大陸」になってしまうだろう、ということ。 私がスイスでささやかに主宰しているフェアトレードの事業も、その目指すところは、いかにささやかとはいえ、アフリカ大陸を中心とした発展途上国における貧困や、援助頼みのメンタリティ、社会の仕組みを、少しでも「自立」「尊厳ある暮らし」といった方向へとシフトさせていくためのコミットメントに他ならない。だが現実のこうした厳しい状況に触れると、さすがに気持ちが萎えるというか、無力感、徒労感にさいなまれないといったら絶対嘘になる。 翻って、日本のマスコミでこうしたアフリカ問題、なかんずく、昨今の中国の覇権ぶりについて目にする機会は限りなくゼロに近い。いくら遠い大陸だからといって、そしてかつてよりはかなり目減りしたとはいえ、国民の税金をつかってODAでかなりのお金を注ぎ込んでいる相手でもある。同じお金を使うにしても、その方途や戦略に大きなインパクトを与えるくらいの記事を、マスコミはマジで載せるべきだと思う。遠い国からの報道というと、とかくどうでもいい「ほのぼの系ネタ」とか「街角の風景」みたいな記事ばかりが採用されるのはほんと、いかがなものだろうか。 開発援助といえば、先の事業仕分けでJICAの職員の出張交通費が槍玉にあげられていた。私は個人的にはJICAの職員がビジネスクラスでアフリカ出張したってかまわないとは思う。それをエコノミーにして節約するのもいいけれど、それよりはその「上級職員」の方々には、くれぐれもアフリカの現状をしっかりと把握していただき、同じ援助をするのでも、より効果のある方法をクリエイティブに考えていただきたいし、中国ビジネスマンに負けないよう、現地語でも習慣でもどんどん学んでネットワークづくりにも励んでいただきたい。そしてお金をあげっぱなし、橋をつくりっぱなし・・・という援助ではなく、長期的視点にたった援助のあり方を創造していただきたい。そうした意義ある仕事をするのであれば、ファーストクラスはちょっと贅沢かもしれないけれど、ビジネスクラスくらいはオッケーだろう。 アフリカの心配をしているつもりが、いつのまにか日本の心配になってしまった。上海万博の歌のぱくり問題で盛り上がるのもいいけれど、中国は、世界を舞台にすごいことをやってるんだぞ、という認識を新たに、そういうグローバル・チャイナに対する日本のポジショニングをしっかり練らなくっちゃ。そうしないと、JICAもこれまでさんざんお金つかってきたのに、そのうちアフリカでも場所なくなっちゃうから・・・。
by michikonagasaka
| 2010-05-11 05:29
| fairy tale & サステイナブル
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