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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2013年 02月 11日
![]() 昨日、音楽家の友人と一緒に午後、アンサンブルの練習を数時間。夕方4時くらいから窓の外では朝方の雪がまた舞い戻り、その後もしんしんと降り続けていた。後半戦に登場するはずの別の友人からSMSが届いたのは確か6時頃だったろうか。 「ごめん、道路がすごいことになっていて立ち往生。遅れます」 その後、私たちの練習は一応終了したのだが、待てど暮らせど件の友人は現れない。 通常20分くらいで着くはずのところを、その彼女、結局2時間半かけて、それも途中で車を乗り捨て、電車に乗り換えぐるりと迂回する形でほうほうの体での到着。かじかんだ手と体をあったかいお茶でまずはあたため、そうして今度はその彼女が練習にとりかかった。その間、私はキッチンで晩ご飯の用意。なんだかんだでみんなが食卓に着いたのは9時をとうに回った頃だっただろうか。 そんなハプニングはあったものの、その後は楽しい晩ご飯とエンドレスなおしゃべり、そして真夜中過ぎのマッサージ大会を経て、さすがに疲れきって床に着いたのは3時を過ぎる時間だった。 一転、今朝は青空の広がる素晴らしいお天気。今冬最低気温だとかのマイナス15度を記録したそうだが、遅めの朝ご飯を食べながら、うちに泊まっていった友と昨晩見た夢の話などをしながら、冬の日曜日、まずはいい感じのスタートを切ったのだが・・・・。 友人も帰宅、そして家族もスキー休暇でフランスの山に出かけ、ひとけのないがらんとした家の中、さて、なんかお昼でも食べようか、と、昨晩の残りを1人でつまんでいたら、突然、両目が猛烈に痒くなり、そしてくしゃみが止まらなくなった。実は昨晩も食事中に同じ症状が出たので私はてっきり恒例の「花粉症」がいよいよはじまったと決めつけ、とはいえまったくこんな雪の日に花粉症のスタートを切るとはどういうことだろうかとほんのわずかいぶかしくは思っていたのだった。 しかし今回は症状はそこでとどまることなく、間もなく、咳が止まらなくなり、そしてとうとう、呼吸困難が襲ってきた。気管支のあたりがきゅーっと閉じていくような確かな実感があって、そしてか細い管を通して、肺がなんとか酸素を取り入れようとひゅーひゅー断末魔の音を立て、その度に胸もとが大きく伸縮する。 普通、このような症状に突然襲われたのであれば誰だって焦るだろう。なにしろ、息がどんどんしにくくなっていき、それにつれてなんだか視界もかすみ、意識も朦朧となっていくわけなのだから。 しかし私にはある「過去」があるため、「ああ、また来てしまった」と、どこか自らの身体的苦しみを遥か上のほうから俯瞰しているような感覚があった。「次は粘膜の腫れが、くるね、たぶん。あ、きたきた、やっぱりきた、ほーら・・・」と、俯瞰の視線は「来るべき次」を予想し、そして「来(こ)しもの」をつぶさに観察し、同時にやはり身体そのものは確実にのたうち回っていた。 キット、キット、キット・・・・・・。 よろめく足どりで戸棚を探り、病院からもらっている緊急時のエマージェンシーキットをそれでもなんとか見つけ出し、大量の水と共に中に入っている4粒の白い錠剤を一気に呑み込んだ。 そのままなだれ込むようにしてベッドに横になり、相変わらず上下に大きく振幅している(とはいえどちらかといえば貧相な)自分の胸元に視線を這わせ、腫れたまぶたが決壊するかのようにして流れ出てくる涙が頬を伝い落ちて枕を濡らすままに任せていた。唇も大きく腫れ上がっていることが、そっと触れてみた舌先で明らかに実感され、ああ、すごい顏になっているに違いないと、これまた俯瞰の目が天井からみじめな自分の形相を気の毒そうに眺めていた。 薬が効き始めるのには通常10〜15分くらいかかる(ことを私は経験から知っていた)。ひたすら時の過ぎるのを待ち、呼吸がそれでも次第にゆっくりと普通の状態に戻っていく様子を意識で追いかけているうちに、昨晩の睡眠不足で疲れていたこともあったのだろう、いつしか私は寝入ってしまった。 ふと目を覚ますと、あたりはすでにうっすらと日暮れを目指す暗さに落ちていた。二時間ほども眠っていたものらしい。 そう、それは紛れもなく「食物アレルギー」なのだった。数年前、レンズ豆を食べたあとに今日と同じ症状が突然出て、その日、私は救急病院送りの身となった。その後、いろいろな検査をへて、アレルゲンをおおまかに特定し、その食品グループに属するものはつとめて食生活から排除するようにしてきたのだったが、それでもたまにうっかり食べてしまうことがある。知らずに原材料にアレルゲン食品が入っていることだってある。病院でもらった命綱の幾包みかのエマージェンシーキットの最後の一包みを、こうして本日、私は使い切ってしまった。それで一命をとりとめ(いや、大げさでなく、本当にそれで死んじゃう人というのはけっこういるものらしい)、さらに数時間をへた今、こうして呑気にブログなどを書いていられるわけである。 しかし、家族が出払って数日間の「お一人様生活」に突入する、その初日にいきなりこれである。近くで助けてくれる人がいないというのは、またなんと心細いことだろうか。大変月並みながら、ああ、ひとりぼっちは寂しいな、と、やせ細った気管支から頼りなげに吐き出される息の音を聞きながらぼんやり思っていた。 最初の「発作」が起きたときの顛末を、いつだったか雑文にしたことがあって、それが上の写真の「なんだかんだ病気自慢」というアンソロジー本に収録されている。このアンソロジー本に登場する人の多くが、自らの「病気」をときに自嘲気味に、時にあけっぴろげに笑い飛ばし、時にしんみりと語っている、その列の末席で、私も自らのアキレス腱をカミングアウトし、それを頭上から俯瞰するみたいに書かせてもらった、そのときのことも久しぶりに思い出した。 雪山に無事到着したことを知らせる家人からのSMSに答え、私は事の顛末を簡単に報告した。最後に「S(娘)にはこのこと内緒にしておいてね。心配するといけないから」と添えるのも忘れずに。そうして、はたと気がついた。家族の出払った家の中はうっすらと肌寒いのだ。人気のなさで実際に気温も下がっていることだろう。夜空には満天の星、そして夜気は心も凍えきってしまいそうに冷たい。カーデガンを羽織った上にさらにショールを肩掛けし、そんなわけでつい先ほど、家中の暖房の目盛りを上げてまわったところだ。 ホームシックならぬ、家族シックにすでに初日にしてやられている淋しがり屋は、けれど、明日からはそれなりにいろいろ予定が入っていて、自分だけの時間をなるべく充実したものにすべく一応、前向きの姿勢。家中にあふれ返った本の山をなんとかこの間に少し片付けるべく、まずは書棚の新調にとりかかることからはじめるつもりだ。
by michikonagasaka
| 2013-02-11 04:02
| 身辺雑記
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