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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2013年 05月 10日
ーーー内閣府の「少子化危機突破タスクフォース(作業部会)」は7日、妊娠や出産に関する知識や支援策を記した「生命(いのち)と女性の手帳(仮称)」を作成する方針を決めた。(日経新聞、5月7日付 速報) この記事が目に入ったとき、あ〜またやってくれた、と仰天した。歯止めのかからぬ少子化の傾向になんとか歯止めを、という悲願が、このような珍案を生んだことに、日本と世界(この場合は、主に欧米世界という限定付きではありますけど)との大きな断層をまたまた痛感。今、何世紀だったんだっけ、と頭の中でカレンダーの映像がチカチカしたほどだった。 そもそも私自身は、日本の「母子手帳」なるものに長らく違和感を抱いてきたものである。胎児時代はまだしも、いったんこの世に生まれてきた新生児〜幼児の生育の記録、予防接種や各種健診の記録、その他、有用と思われている数々のアドバイスを、ひとり「母」のみの管轄下に置くこの発想は、どう考えても今どき、時代錯誤。それプラス、「母子」という言葉が連想させるさまざまな価値観の総体というものが、その、どうも、私は苦手だなあ、という個人的違和感。 さらには母子に限らず、◯◯手帳というようなものが公から支給され、それに猫も杓子も従順に従うことを求められているという、そういう小学生への生活指導的なあり方も、なんだか気に食わない。 日本を離れて久しい私には、たぶん浦島太郎的側面も多分にあるであろうことは重々承知している。しかし、世の趨勢をざっと眺めてみたならば、浦島太郎は私じゃなくて、日本という国全体なんじゃないか、という疑いを、私は自分の中からどうしてもぬぐい去ることができない。 母子手帳を、せめて「親子手帳」と改名するのであればまだしも、今度はそれに加えて「女性の手帳」の登場という運びになってきているらしい。それを私はフェイスブックのタイムラインで真っ先に知って、我が目を疑った。だがその驚きは、これが「少子化危機突破タスクフォース」(座長・佐藤博樹東大大学院教授)という内閣府の少子化対策チームの委員会の場で、満場一致で賛成されたらしい、ということを知るにいたって、沸点に達した。この委員会メンバーは、であるならば、当然、男性だけだったんだろうと思いきや、委員名簿を見てみたところ、15人中、なんと6人も女性メンバーがいるではないか。 そのタスクフォースなる委員会の趣旨というのが、またふるっていて、以下、そっくりそのまま引用すると 「これからの若い世代が家族を形成し、子育てに伴う喜びを実感できると同時に子どもたちにとってもより良い社会を実現するため、結婚・妊娠・出産・育児における課題の解消を目指すとともに、家族を中心に置きつつ、地域全体で子育てを支援していく取組の推進等について検討を行うため、少子化危機突破タスクフォース(以下「タスクフォース」という。)を開催する。」 →これ、句点なしの一文であるところが、まずはすごい。誰が文章を書いたかしらないけれど、ずいぶん切り貼り的で、あれもこれも全部、無理矢理押し込めた感の悪文。いえ、別にお役所の文書に美文を期待しているわけではないけれど、なんだか錯綜している。文章が錯綜しているということは、たぶん趣旨そのものも錯綜しているんだろうな、と推察したくなる。 この女性手帳なるもの、通信社発表の表現をそのまま借りると、 「女性手帳は「妊娠や出産の適齢期を知らない人が多い」との指摘を踏まえて検討されたもので、女性の将来設計に役立ててもらうのが狙い。」 という意図で持ち上がった案だったらしい。 ここでいう「適齢期」というのはバイオロジカルな適齢期ということ? だとしたら、例えばの話、高齢出産は「リスクが高い」という優生保護法的な発想がぷんぷん匂ってきて感じ悪い(というか、時代錯誤)。 あるいはこの「適齢期」は、人間(女性だけ?)の成熟度をも暗に指している? つまり、高校中退でぶらぶらしてるような若者(女性)に妊娠などされたらいろいろな意味で困るんですよ、国や地方自治体としても、という本音が見えてくるような。 まあ本当の意図は、「晩婚、非婚」の増加を食い止め、なんとか妊娠可能な年齢で結婚してもらい、子供を産んでもらいたいというあたりにあるのだろう。「女性の皆さん、お願いしますよ」というやけっぱちともいえる叫びが内閣府の方面から聞こえてきそうである。 さて、そういう意図を現実にするための方策として、この手帳を「女性の将来設計に役立ててもらう」とここには記されている。が、自分の将来設計を立てるのに、国からのアドバイスは必要ないし、妙に誘導されるのも迷惑千万な話。それに(これはあちこちですでにたくさん指摘されていることだけれど)、子供を産むか、産まないか、産むとしたらいつ産むか、というような事柄は、女性一人で勝手に「将来設計」を立てたところで、そもそも相手あっての話。アメリカあたりの精子バンクで「これは」というものを入手して、自分で稼いでシングルマザーするわよ、あたし、というようなケースでもない限り、ものごと、そう自分一人で好きなように決められるものじゃない。決めたとしたって思うようにいくとは限らない。 そもそも「家族」という単位を、まったく無批判に「婚姻関係にある男女、および、その子供」というふうに捉えていて、たとえばの話、婚外子とかゲイの結婚というような事柄をあっさり無視している感じというのも、どうにもいただけない。 国を運営していく上で少子化が由々しき問題であることはわかる。けれど、国が個人のリプロダクションの問題に口を挟むのは筋違いというものだ。それは根幹のところで、あの悪名高き優生保護法や、戦時下の「産めよ増やせよ」政策につながる発想だから。 この委員会のメンバーである方々、本当に「よし、これでいくぞ」と心から賛同されたのだろうか。だとしたら、ずいぶんと偏った(最初から、内閣府の意図に賛成してくれそうな人だけを集めた)人事としかいいようがない。直感的に、そしてFBやツイッター上で炎上している騒ぎの印象からして、こういう発想が国民の総意に近いものとはとても思われないからである。 炎上が飛び火して、火消しが不可能になった挙げ句、「前言撤回、あの手帳の話はなかったことにします」という結末にでもなればいいけれど、どうなんだろう。
by michikonagasaka
| 2013-05-10 03:03
| 考えずにはいられない
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