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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2013年 11月 26日
![]() 出身大学の同窓会なるものに、過日、生まれて初めて参加した。といっても、今回の集まりは、スイスと日本の国交150周年記念の一環でチューリッヒ大学とチューリッヒ工科大学(ETH)、そして私の母校、京都大学の合同シンポジウムが開催された折に、「もののついでに」というほどの感覚で有志数名が企画したささやかな集まり。参加者の半数ほどは、このシンポジウムに参加するためにはるばる京大から来瑞した研究者のみなさま。そして残りの半数は地元チューリッヒをはじめ、バーゼル、ジュネーブ、あるいはドイツなどで活躍する研究者のみなさま。 ということは蓋を開けてびっくり。私以外のほぼ全員が理系研究者というメンバー構成の、(私にしてみれば)それはそれは異文化異業種的な趣濃厚な同窓会ではあったのだった。 とはいえ、結論を先にいうならば、これは実に楽しく刺激に満ちた集まりであった。門外漢ならではの無邪気な特権で、ここぞとばかり、私は日頃、ぼんやりと疑問に感じていたことを周りの方々に次々と質問。そして、おそらくはお門違いである部分も大いにあったであろう私の質問に、彼らは実に真摯に丁寧に答えてくださった。もちろん、「百万遍のあの角の店」「農学部のあの畑、あそこの山菜を天ぷらにすると美味しい」「京大ブランドのビールってどないなんやろか」「森見登美彦って、全国区でも受けてるってどういうことやろ」といったノスタルジックな同胞話題には事欠かないとはいえ、なによりも私の心を打ったのは、彼ら理系人間たちの、自分の好きなことに関する呆れ返るほどの一途さ、夢中さという資質そのものなのだった。 たとえば右隣の◯君。このたび、無事博士論文を提出したばかりという若々しい院生の彼は、ひょっとしたら私の息子だったとしてもおかしくないような年齢。その彼の専門はマレーシアの熱帯植物の開花の営み! 「ああいうトロピカルな国というのは四季がないわけですから、花が咲くシーズンというようなものもないわけですね、理論的には。ところが、何年かに一度、突然変異のようにして、一斉に花々が開花する現象がある。一体、これはどういうことか、ということを調べていくと、どうやらある種の乾燥期というものにこの開花期が対応しているらしいということがわかってくる。これは雨期と乾期というサイクルのものではなく、もっと長いスパン、けれど何年に一度というふうに決まっているようなものではない、いつ訪れるともわからない乾燥のピリオドに、あたかもそれを何年も待ちわびていたかのように、花々が一斉に反応して、わ〜っと開花するんですよ」 「まあ! それって七夕よりもさらにレアな邂逅の機会ってことよね。だって開花っていうのは、おしべとめしべのあいだの受粉があって、繁殖ということもそこで起きるわけでしょう。いつ訪れるとも限らぬパートナーとの邂逅をずっとずっと待ち続けていたものが、あるとき、あ、今だ、と花開く。それってすっごく美しくない?」 私はただ率直にそう感じて、そして感じたとおりを口にした。 「そう、そのとおり。美しいんです。神秘なんですよ」 大人しそうな◯君は、かすかに頬を紅潮させて私に同意した。 「ねえ、小さいとき、どんな子どもだったの?」 思わず、そう尋ねた私に◯君は、 「僕は農家の子どもだったんですけど、子どものときから好きでした、植物とか野菜とかの生成という営みが」 ほお、そうか。 「でも子どものときはそういうのはカミングアウトできないじゃないですか。大学に入って自分と似た人がいるんだっていうことが分かって、凄く嬉しかったですね」 その◯君の向かいに座っていたIさんは、農学部に属し、昆虫の専門家だとのこと。 「あの、農学部というようなところに希望して入ってくる学生というのは、いったいどういうタイプの若者なんでしょう?」 この私の素朴な質問に、I先生、シンプルに一言。 「そうですね、自然が好きな人たちかなあ」 たったこれだけの回答に私はひどく感じ入ってしまったのである。自然が好きな若者。いいなあ、そういうの、と、自分とはまるで接点がなかったであろう若者たちを、好ましい人間たちだと、齢を重ねた今にして心からそう思う。 そのI先生いわく、 「まあこの業界、確かに女性は少ないですね。そうですね100人に一人いるかいないか、くらいの感じ? でもね、昆虫の標本作ったりして蒐集していくプロセスにおいて、男と女には明らかな嗜好の差があるんですよ」 「それは一体どのような?」 「女性の場合はですね、同じ虫を集めるのでも、どこか宝石を集める感覚があるんですね。美しさが優先される。美しいものを端的に美しいものとして愛でる、そういう感性が彼女たちにはあるんですね」 「なるほど」 「それに対し、我ら男性はというと、レアなもの、希少なものへの偏愛という傾向がどうしても勝ってくる。一般種ではなく特殊な、例外的な突然変異的なものに対する偏愛。そこに美を見出すわけですね.客観的にいくら美しくても、それが一般種であると興味は半減してしまう」 では女性代表にも何かひとこと。というわけで左隣の女性研究者Sさん。専門は進化生物環境学。ってそれだけでは一体なんのことやらよくわからない。詳しくお話を聞いてみると、植物(たとえばそのへんの雑草)間の偶発的な異種間の交配が起きたときに、どういう新種が進化論的にサバイバルし、どういう新種は淘汰されていくのかというようなご研究であるらしい。地元チューリッヒの植物園内に最近まで研究室があったとおっしゃるので、 「ああ、あの植物園。いいところですよね。近くにはかわいらしい小川もありますよね」 「その小川のほとりでね、毎日、仕事してましたよ」 「え?」 軽率にも「じゃあ、そこの草を摘んで実験室に持ち帰ったりするんですか?」とお尋ねした私に、 「いえいえ、環境の中でそのまま観察しないと意味がないですからね、そこにしゃがんだ姿勢でね、するわけですよ、研究を」 とSさん。 上述の異種間交配とそれが環境にもたらすインパクトというようなことを、彼女は小川のほとりにしゃがみ込んで来る日も来る日も観察し続けたというのだ。 ・・・・とまあ、こんな調子で、私は感心することしきりの数時間。同窓会会場となったチューリッヒ大学近くのその店は、自分のところでビールも作っていて、そんな自家製ビールを飲みながらの楽しい歓談だったのだが、驚くべきは、参加者の一人の台詞。 「ああ、ビールといえば、うちの研究室でそのへんの試験管で本業の研究の傍ら、趣味でビール酵母育ててる人がいましてね、研究に研究を重ねた結果、どうやら商品化にこぎつけた。チューリッヒのレストランなんかに卸してるらしいんですよね」 ああ、まったく我が愛すべき理系の方たち、そして彼らの「夢中」のあり方。 前述のI先生の一言が忘れられない。 「今はね、まあこうして大学というところに所属して研究したり教えたりしてるわけですけどね、夢はですねえ、早期退職などをして野に遊び、虫とたわむれるような暮らし。たわむれながら観察させていただいて、またレアな美をときには発見する幸運にも巡り会ってというような、そんな暮らしをこう、のんびりとねえ。ま、今もそれと大して変わらんことやってますけど(笑)」 凡庸な文系人間である私は、まるで異星人でも見ているような感慨と共に、彼らの愛すべき「夢中」をうっとりと眺め、いいなあ、こういう人たちっていうのも、と、世間で言うところの異業種間交流の意義などについてちょっと考えてみたりもしたのだった。いや、ビジネス界でいうところの異業種間交流なんていうそんな有目的的なもんじゃなくって、単に楽しくてうっとりするから、というそれだけの理由なのですけどね、私の場合は。 「無知と科学」というテーマのこんなお話も(コロンビア大学の脳科学者TEDスピーチ。英語分かる人、ぜひ、
by michikonagasaka
| 2013-11-26 06:06
| 身辺雑記
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