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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2015年 09月 17日
![]() つい先ほど、参議院特別委員会で安保関連法案が採決され、可決となった。NHKのニュース速報では「参議院の特別委員会で採決が行われ、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決されました。」とあるけれど、ユーストリームで国会中継を見ていた限り、何が何だかよくわからぬ騒ぎのまま、どうやら可決と相成ったらしい(なぜなら、委員長の周りに与党議員がかまくら作ってしまって何も見えない、しかも議事録もないという(民主党・金子議員のツイッターより)ような有り様なので。) ここに至るまでの数ヶ月、厳密には、昨年12月の衆院解散・総選挙のあたりからぼんやりと、そして5月14日の閣議決定のあたりからもう少し緊張感をもって成り行きを注視してきたし、コミットしたり発言したりといったことも時にしてきたが、現時点で本会議採決はまだ行なわれていないものの、国民の過半数を超える反対の意思表明を考慮に入れない多数決の論理で、それもこんな強引な方法によってこのようなプロセスが次々とまかり通っていくこと、予想はしていたとはいえ、やはり大変残念だ。 中央公聴会という形でこの審議もいよいよ大詰めと思われた一昨日、私自身は朝から頭痛がひどく、おまけに夕刻には犬の散歩途中の急勾配で激しい転倒をしてしまい、擦り傷と打撲だらけで体調が非常に優れなかったのだが、前々からお約束していたフランス語のレッスンをキャンセルするのが申し訳なかったので、夕刻、予定どおりにレッスンをさせていただいた。 何の資格もなければ、指導経験も持たぬ一介の素人が人様になにかをお教えするなど滅相もないことなのだが、そこをぜひ、といってくださる心優しい生徒さんたちがいらっしゃるので、じゃあ私にできることをできる形でさせていただきましょうということで始めたこの教室。不定期開催、なんのメソッドもなく、実に行き当たりばったりではあるけれど、毎回、さあ、今日はどんなことやろうかなと準備するのも楽しければ、授業中のわいわいと賑やかな雰囲気も楽しい。 さて、その夜のレッスン。本題とは別に「最後のおまけ」として、今回は珍しく一篇の詩をとりあげてみた。かの有名なヴェルレーヌの「秋の歌」である。短いし、単語もそんなに難しくないし、窓の外はとっぷりと秋景色で時節柄ぴったり、それになんといってもこれは上田敏の伝説的な訳によって、明治以来、日本人がフランスという異国に抱き続けてきた憧れの象徴のようなものでもある。そういう文化史的側面にちらりと触れるのもまた楽しかろうと思って選んだ教材だった。 秋の日のヴィオロンの・・・ではじまる上田訳はあまりに有名なので、もちろんみなさんご存知でしょうが、とふったところ、意外にも、生徒さんたちにとってそれは初耳だったらしい。この詩がどこで韻を踏んでいるか、そして、それぞれの言葉やその連なり、組み合わせ、主述の倒置などが、どのような効果をもたらすか、みたいなちょっと文学部の授業みたいなこともちらりと入れながら「フランス」を「おフランス」と呼ぶときに込められる独特のニュアンスの話、シャンソンの話など、どんどん脱線したけれど、フランス語の音や響きの美しさをちょっとでも感じ取ってくれたら先生冥利に尽きるというもの。そしてその上で、上田敏の文語訳と合わせて、私がやっつけ仕事で訳出してみた超・現代口語訳のプリントも合わせてお渡しして、ああそういうことをいってるのねという意味の伝達もなんとか心がけてみたつもり。 安保法案の話から、突然ヴェルレーヌというこの支離滅裂な展開。しかし実は、私の中ではその支離滅裂もそれなりに整合性があるのである。 芸術活動も言論活動も、あるいはお洒落したり、美味しいもの食べたり、人を好きになったり、旅に出たりということも含め、そうした人間を人間たらしめる営みがのびのびと行なわれ得るために、平和や法治、自由や人間の尊厳ということがどれだけ不可欠か。そのことをわたしたちは歴史からたっぷりと教わった。自由と享楽を愛するものであればこそ、安保法案は①その法案自体に違憲な箇所がある ②その立法プロセスに詭弁や嘘やごまかしが山のように含まれている、という2点において、それが最終的には個人の自由、芸術活動や日々のささやかな悦びを享受する部分を脅かすものだと思うから、これにものすごく反対なのである。その言葉の軽視、法治の蹂躙の側面がとってもいやなのである。 すごく怠け者でずぼらで、ズルしたり嘘ついたりということも時にしでかす私ではあるが、実は自分の中の「これだけは」という踏み絵というものがある。自分の信とするところに照らし合わせた時に「ん、違うんじゃないか?」と感じたとき、たとえば組織の一員として遠慮したり、あるいは周りの人間の困惑を怖れたり、ということで筋を通せないようなことは自分としてはダメなのだ。自分の中の踏み絵に、自分は合格しなくちゃいけない。だからこそ、多少煙たがれようが、ネトウヨの人たちからすごい攻撃を受けようが、考えたいことは考え、表現したいことは表現したいのである。 さて、こうして駄文を書いているまさに今、手元に紛れ込んできたルモンドの記事。本日の日付けで、タイトルは「日本は"役立たない"という理由で26の人文社会系学部を閉鎖」。なにもこのタイミングで、このだめ押しはないでしょう、と地べたにへなへなと座り込みたくなる。ことほどさように、安保法案を立法しようという意志と、大学から人文社会学系学部を減らそうという意志、そして武器産業をもり立てようという意志、原発を海外に売ろうという意志、特定秘密保護法を施行する意志、これらは個々に独立したものではなく、一連のある志向性Intentionalitätをはっきりと示している、いわば「セット販売」的なものなのだ。セット販売だからバラ売りは利かない。いや、バラ売りでは志向するところの目標が達成しにくいので、あくまでセット販売にこだわるのである。これはもう、世界観の根本的な違いとしかいいようのないものである。 芸術を愛し、言葉を尊重し、人間の尊厳にとびきりの重さを与え、この世に生れ落ちた赤ちゃんたちが一人として戦争や貧困や虐待などで命を落としたり苦しんだりするというようなことのないようにと願う私個人の世界観と、それはまっこうから対立するもの。あまりに気の合わない相手。どう妥協してみたところで尊敬したり親しくなったりできない相手であるということを思い知らされる。そして、そういう自分と真反対の世界観が、立憲主義をないがしろにする形で、あれよあれよと具現化されていくことに、激しい脱力感を覚える。 そんなこんなで、今日、秋のヴィオロンの音はとてつもなく哀しくて、嗚咽がこみあげてこようというもの。けれどその反面、今回の一連のできごとで私とよく似た世界観を持つ人たちだって、日本にはものすごくたくさんいることも知ったし、ゆとり世代などといわれて揶揄され続けてきた若い方達が自分たちの頭で考え、心で感じ、一人一人の個人として声を上げたり行動したりしている姿には、心底感動した。 最後に、有名な上田訳をご紹介して、このあまりにまとまりのない記事の唐突な店じまい。また国会中継に戻ります。 ↓こちらです。一つ一つの訳語はもちろんのこと、きりっと引き締まったヴィジュアル、そして読み上げた時のリズム、なんと美しいのでしょうか。 ![]()
by michikonagasaka
| 2015-09-17 19:34
| 考えずにはいられない
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