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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2016年 05月 11日
![]() ベルギーのアントワープからパリ経由で次の国へ移動するにあたって、到着駅は久々のGare du Nord(北駅)。パリには6つのテルミヌス(終着駅)があり、それぞれ東西南北の行き先への玄関となっているが、北駅はさすがにベルギーやオランダなどの北方面へのそれだけあって、南に向かう駅に比べると、どこか物哀しく、何といっても雨模様がよく似合う駅。 それはさておき、さて、駅構内を出口に向かって歩いていたら、突然こんなアナウンスが聞こえてきた。 「本日、雨天のため、足元が大変滑りやすくなっておりますので、どうぞお気をつけください」 耳を疑った。日本だったらごく普通のこうした「親切な」(ちょっと過保護で余計なお世話ともいえる)アナウンスは、いかにもフランスらしくない。旅の同行者、仕事仲間のエリック(パリ在住のフォトグラファー)とその瞬間、偶然目が合った。「何これ? どうしちゃった、パリ???」。私はその目で自分の驚きを伝えた。 私の驚きへの回答として、以下、エリックが話してくれた「フランスの変化」が私にはあまりに興味深く感慨深いものだったので、ここにその概要を記しておこうと思う。 レピュブリック広場で今も続行中の市民運動、ニュイ•ドゥブー(nuit debout)に見られる市民的連帯は、非常に平和で穏やかで、これまでのフランスのどの抗議運動とも性格の異なるものだという。そこにあるのは、フランス革命とも、5月革命とも、そして無数のデモやストライキとも異なる、静かで暖かい市民運動なのだ、と。 それと同時に三つの、いわゆる社会派ドキュメンタリー映画(Demain, Merci Patron, En quête de sens--直訳すると「明日」「社長、ありがとう」「意義を探して」)が記録的な共感や反響を得ているが、これらに共通するのがまさしくニュイ・ドゥブーと同じ通奏低音を奏でている、すなわち、静かな異議申し立て、そして連帯なのだそう。 「こんなフランスを見たことがない」----私と同世代のパリジャン、エリックはいう。「驚き、そして嬉しく思ってる」と。 個人主義や自由という名の下で、ともすれば身勝手で無責任の方向にとかくいきがちだった彼らが、今、労働環境、環境、人権や人間の尊厳、平和で持続可能な世界といった方面で、ある種の「気づき」に至った、そしてその大きなうねりは二つのテロ攻撃(2015年1月のシャルリエブド紙攻撃と同年11月のテロ事件)の後、一気に可視化されるようになったにだ、と。 「自問し、思索し、議論し、異議申し立てや抗議もするけれど、それを攻撃的、糾弾的なスタイルでなく、温かくユーモアを交えた平和的なスタイルでしようとしているところがね、これまでとは全然違うんだよ」 パリに暮らしていない私は、そうした変化の「実感」というものを抱くことができない。けれど、北駅の、あまりにフランスらしくない場内アナウンスに電気ショックのような驚きを感じた、その反応は思いの外、本質的なところへの反応だったのかもしれない。 北駅には、実は個人的なノスタルジーを呼び覚ます「縁」も多少ある。そして今日は雨模様の薄暗い日。いくつかの「心を暗く沈めうる出来事」が身辺にあるという事情も相まって、エリックが話し聞かせてくれた「変化」(それを彼は「よい変化」といった、それも何度も)は、沈みがちな私の心に少しばかりの軽やかさをもたらしてくれた。 テロを機に、嫌悪や反動や怒りといったものの代わりに(それもないとは言えない、決して)、人間同士の優しさや信頼の絆が強まったことには希望も湧いてくる。最終的に残るのは、愛と赦しと寛容、そして軽やかであったかい笑い。いい歳して、まだそんなことをナイーヴに信じている。自由、平等、博愛の「博愛」に、フランス革命以来、初めてスポットライトが当たる日が、もしかしてくる? さて、これから深夜のフライトでちょっと遠い南の国に出かけてきます!
by michikonagasaka
| 2016-05-11 04:01
| 身辺雑記
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