序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2017年 09月 27日
「海外のメディアによると」という枕詞で、時折、日本の政治状況を扱った記事が紹介される。あたかも「海外では日本のひどい現状が大きく批判されている」かのごとくの文脈で紹介されることが多いが、スイスに在住し、なんとなく英仏独語で書かれた「海外メディア」なるものに触れる機会の多い暮らしの実感からいえば、日本はむしろ、誰からも顧みられていない、という方が現実をより正直に映し出す表現かと思われる。 トランプ大統領のどうでもいいツイートが「海外メディア」で話題になる。昨9月24日に行われたドイツの総選挙の結果については、ほとんどのメディアが、論評や分析も加える形でそれなりに大きく取り上げた。クルド独立の住民投票についても同様。北朝鮮のミサイル実験についても同様。ハリケーンについても同様。けれど、日本のことが話題になるなど、めったにあるものではない。先日の安倍首相の国連総会における「北朝鮮との対話解決はもはや意味がない」という趣旨の威勢のいい演説のことを取り上げた記事も私の周りには目立つ形では見つからなかった(そもそも、その演説時の会場はほとんどが空席だった。つまりメディアはおろか、国連メンバー国の代表者たちも、彼の演説に特に興味がなかったということ)。地政学的な意味でも、外交上の影響力においても、日本は、世界から注目を浴びる「大国」などでは決してない。(困難山積にもかかわらず)観光客が大挙して押しかける、平和で安全で食べ物が美味しく、人々が親切な国。そんなふんわり漠然とした、どちらかといえばポジティブなイメージだけが一人歩きをしている国なのであることを、まずは肝に銘じておきたい。 そんな中、フランスの新聞「ル・モンド」紙が今回の衆院解散選挙を巡る記事を社説に載せた。 「わ、珍しい!」 こんなことは本当に滅多にないので、ちょっとびっくり。 日本にはメジャーメディアの特派員が相当数いるが、彼らが一生懸命取材して記事を書いても、本社デスクからはなかなかメインの扱いにはならない。さしてニュース性がなく、国際情勢上の喫緊性に乏しいと考えられているからだろう。また、日本独特の記者クラブ制度によって、彼らが主だった内政上の公式な取材の機会から遮断されているという事情もあるだろう。もちろん、特派員たちの語学力や日本についての知識が必ずしも常に一流でない場合もあるのかもしれない(それをいうなら、日本のメディアの海外特派員は、一部の例外を除き、たぶん、もっとお粗末かもしれない)。 と、そんなわけで、この社説をざっと訳してみようと思い立った。内容的には、私にとってはことさら新しいことでもないが、ごくたまに紹介される日本が、このような形であることを認識する意味では悪くないかと思う。こういうことは昨今、時間との勝負なので、やっつけ仕事で大急ぎでやらないといけない。荒い部分はご容赦いただきたい。 ・・・・・・・・・・・・・ 「極東の危機」頼りの衆院選 ここ数週間、日本上空を飛び越え太平洋に落下した二機のミサイルと平壌当局の剣幕にもかかわらず、日本人は隣国北朝鮮の脅しに取り立てて動揺している様子でもない。こうした脅威は確かに今始まったことではないが、今回はこれまでとは異なる次元に発展した。日本人が不安に思うのは、金正恩ももちろんのことだが、さらにトランプが「何をするかわからない」という点だ。 安倍晋三総理大臣が9月25日に衆院解散選挙の意向を発表したのは、まさにこの不安を利用し、五年間手にしてきた権力を保持し、彼がいうところの日本が直面せざるを得ない「国家の危機」へ立ち向かうことのできる強い男をアピールするためだった。「国家の危機」? 欧州やアメリカが直面している不安定な動きに比べれば、日本は平和の避難所のように思われる。いや、もしかして、平和すぎると言えるのかもしれない。安倍氏率いる自民党は統計ではトップの支持率である。20年にもわたる成長なき経済から国を救い出す政治をこの先も続ける担い手、それが安倍氏が自らを規定するところだ。 安倍氏は、選挙に棄権するという形以外で不満を表現する発想に乏しい無関心な世論を利用している。小池百合子都知事が結成した新党「希望の党」は、世論の一部に浮遊するこうした不満や閉塞感を資産にする目論見である。安倍首相いうところの「国家の危機」とは、日経新聞の言葉を借りれば、まさに「民主主義の溶解」にこそあり、小池氏率いる新党は、世界第三の経済大国・日本が直面する困難を主な糧にして自らを国際舞台に立たせようとするのだろう。 2012年に政権を取った時、安倍首相は「ジャパン・イズ・バック」と高らかに宣言した。そしてその三年後、国外における自国の軍事力行使を正当化させるために、「積極的平和主義」を打ち出した。以来、世界での存在感を増したいという安倍氏の意欲は、とりわけ、トランプ氏のアメリカとの連携強化という形で表現されるようになった。 世論に巣食う「不安」 安倍氏はこれまで北朝鮮問題におけるトランプ氏の解決策についてコメントすることを用心深く避けてきたが、そこから外れるようなことも決してしない。この追蹤主義によって、安倍氏は日本を従属のポジションに置き続ける。そこのところはあまりよく聞こえてこないけれども。日本は、北朝鮮と中国の問題について自分ごととしてのイニシアチブを一切とらない。朴槿恵大統領との束の間の蜜月のあとは、韓国との関係も良好化したとは言えない状況だ。北方領土問題での妥協点を得るための対ロシアの努力も、身を結んでいない。トランプ氏の当選後、世界の指導者の誰よりも早くお祝いの言葉を述べるために訪米した安倍氏は、ワシントンとの連携が、日本を囲む地域情勢における日本のイニシアチブを制限することを知らないかのように振る舞う。それは近隣国(中国や韓国)との関係を不安定にするだけでなく、米国大統領の好戦的な情熱を諌める役にも立たないというのに。地域情勢の悪化は人々の不安を掻き立て、第二次大戦後以来の平和憲法を改憲するという安倍晋三氏の究極の野心を実現するのに寄与する。こんなことが、日本に蔓延する閉塞感への良薬になるのだろうか。
by michikonagasaka
| 2017-09-27 20:40
| 考えずにはいられない
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