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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2017年 10月 19日
![]() さて、蕎麦に欠かせぬワサビ。意識のずうっと奥の方で、生ワサビが冷蔵庫のどこかに隠れていることを私は知っている。しかしいくらなんでも、という恐怖があって、それをなかなか探せずにいるうちに随分と時間が経ってしまった。どのくらいの時間かというと、大雑把に勘定して三ヶ月ほどになるだろうか。 そう、三ヶ月前、猛暑の東京で今回の宿としたのは築地にあるサービスアパートメントだった。新橋演舞場からさらに海の方へ数本、行ったあたり、つまり、築地場外の目と鼻の先なので、人との約束のない朝など、めくらめっぽう界隈を散歩したものだった。そもそも外国人観光客のマインドセットなので、そういうことが非常に楽しい。しかも自分で言うのもなんだが日本語もペラペラだから、店のおじさんやおばさんやお兄さんなんかとネイティブ的に軽口をたたく楽しさがそこに上乗せされる。 と、そんなわけで、その日もまたふらふら徘徊しているうちに、ワサビだけを商っている店にぶち当たった。静岡産と長野産の立派なワサビがずらりと並んでいる。値段には随分と違いがあるようなので、「なぜ?」と尋ねたら、ご主人、あれこれ丁寧にその理由を話してくださる(その内容は大方忘れた)。普段は帰国前日あたりに近所のスーパーで小さめのワサビを一つだけ買って数日の享楽のために持ち帰っているのだが、この日は楽しいおしゃべりに背中を押され、場の空気に鼓舞されて、気が大きくなった。それにご主人、「この茎になってるところをね、最初にばさっと切っちゃうとね、長持ちするよ」と教えてくださる。 「じゃあ、大きめの二つほどくださいな」 そういって、ご主人オススメの静岡産を迷わず選ぶ。 「よっしゃあ。おい、○○(奥にいる店員さん)、こちらのお姉さん(!)に2500円の二つ、包んで差し上げて。あ、お代はまけとくよ、遠くまで持ってってくださるんだからさ。いやー嬉しいねぇ」 実は2500円だったかどうかは覚えていないのだが、なんだかそのくらいだったと思われるお代を少しおまけしてもらって、意気揚々と歩いて2分の部屋に持ち帰り、すぐに冷蔵庫に入れた。そしてその数日後、ホクホク顔でスイスまで持ち帰った。 大喜びでおろして大喜びでこれを食したのは、だが最初の二週間ほど。第一、ろくな魚も手に入らないので、ワサビを大量消費するにも限界がある。ご主人のアドバイス通り、茎のところはちょきんと切って、ジップロックに入れたものは、かくして我が冷蔵庫の奥のまた奥へと押しやられ、時は移り、秋晴れの本日を迎えたのであった。 実は9月にも一度、恐る恐るワサビを取り出して使ってみたことがあったが、その時点ではなんの問題もなかったから、今回もいけるだろう、と踏んだ。予想に違わず、別に糸を引いてるわけでも、変な匂いがするわけでもない。気分を上げるために、鮫皮のワサビおろしで芝居染みた演出にも抜かりなく、そうしておろした静岡産のワサビは、ツーンと素敵な香りをあたりに放ち、クリーミィなテクスチャーと淡い緑色が大変美しい。 強いて言えば、夏のあの日々に比べ、辛さが増したくらいか。そう、静岡産天然ワサビというのは、採れたては本当に辛くないんですよね〜(ということを伊豆に住む母の元を数え切れないほど訪れた経験から私はよく知っている)。 それにしても、ワサビというのは一体どのくらいもつものなのだろうか? 冷蔵庫の奥には、同じ夏日に場外の八百屋さんが「おまけですー」と分けてくれたスダチに似た柑橘の実(名前を忘れてしまいました)と、時節柄、まだ青かった柚子が、これまた腐るわけでもなく健在であったことを本日、発見して我が目を疑った。食い意地が張っている一方、このように、食材の賢い始末の才能がほぼゼロであるため、憧れの辰巳芳子さんみたいなライフスタイルが逆立ちしても叶わないことを心から恨めしく思う。 というわけで、静岡産ワサビ、まだ一本半(!)残っているので、消費してくださるご近所さん、募集中。
by michikonagasaka
| 2017-10-19 01:49
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