序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2018年 09月 28日
ルモンド紙に掲載されたフィリップ・ポンス氏の「日本からの手紙」(2018年9月26日付)は、観光名所としてのフクシマについて。安楽死ツーリズム、医療ツーリズム、セックスツーリズムなどなどと並ぶ「黒いツーリズム」というカテゴリー。そもそもそういうもの(趣向)がメインストリームで存在するという意識もこれまでほとんど持ったことがありませんでしたが、フクシマがその行き先として人気になっているとは初耳でした。避難解除や原発再稼働などについては目新しいことは書かれていませんし、原発大国フランスに言われたくない、という反応もよくわかります。とはいえ、時々外の声で「ああそうだった、そうだった」と思い出したり振り返ったりすることも大切かな、と思い、翻訳してみました。急ぎ翻訳ですので荒いところはご勘弁を。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 災害ツーリズムで人気上昇「フクシマ」 この十年で日本では観光客の数は少なくとも三倍になった。そのうちの多く(日本人観光客も含む)が訪れる意外な場所、それは福島の原発の周りにある被災地だ。福島原発は2011年3月の地震と津波によって原子炉の中心部で核融合が起きることで大きな被害を受けた。その福島が今、「災害ツーリズム」として人気なのだという。そこでは覗き見趣味が惨事を記憶する務めとせめぎ合っている。 2017年には浪江町、富岡町など、避難前の状態で時間が止まったままの街を10万人近くの人が訪れたという。「除染が完了したので住民のは安全に帰還できる」と政府が声高に保証した地域の町々である。観光バスや自転車によるガイド付きツアーは「地元民との交流」を謳い、船旅の雰囲気で海上から発電所を見学するというオプションもついている。 大声で喧伝 2013年より被災者たちは訪問客たちの小さなグループのガイド役を勤めるようになった。やがて政府とコラボをする業者たちが彼らに取って代わった。政府は時にやかましいほどに「すべて平常通りに戻りました」と喧伝することに心を砕いてきた。 ネットフリックスで放映された新しいドキュメンタリー「黒いツーリズム」(強制収容所、虐殺や自然災害、産業災害の現場)の中では、福島の件に一章が割かれていたが、これが問題の発端となった。浪江町の食堂で昼食をとるリポーターが出された料理は汚染されているのかと自問し、リポーターのガイガーカウンターが政府が認める「放射線量の許容範囲」を超える数値を示して観光客がパニックに陥るというシーンがあったからだ。 日本もその負の側面において「黒いツーリズム」と無縁ではない。例えば青木ヶ原の森。富士山の北西に位置する「樹の海」と呼ばれるほどの景勝地は自殺の名所としても知られる。観光客を引き寄せるのは、その自然の美しさなのか、あるいは抜きん出て悲劇的な地という所以なのか。いずれにせよ、福島周辺の街を訪れる観光客について、土地の住民が抱く思いも複雑であることは間違いない。 観光客の到来が見捨てられた街に再び息吹を与え、避難民たちの帰還を促すのではと期待する向きもある。発電所の北部数キロメートルに位置する浪江町では、2017年3月に「除染済み」宣言が出て以来、観光客の数が住民の数を上回っている。もともと2万1千人だった住民のうち、帰還したのは700人。高齢の住民は淡々という。「私の年じゃあもう大した危険もない。だから戻った。ここが私の故郷だし、ここで死にたいから」。けれど若い人たちは同じようには考えない。 避難民が抱えるジレンマ全国に散らばる7万人の福島避難民(2011年当時は16万人)は今もなお、仮設住宅住まいだ。彼らのジレンマ、それは仮設住居が次々と閉鎖され、これまで支払われてきた補償金が打ち切られる中、故郷の街は「除染完了」と宣言され、目に見える形での被害の痕跡も消えてしまった今、もし帰還しなければ、そのあとは自己責任ということになる。危険を見て見ぬふり、あるいは否定し続けてきた上に、同じように淡々と「すべて平常に戻った」と宣言する政府のことなど信じていないから彼らは戻らないのだ。 政治意識を持った被災者たちは観光客の訪問によって世間の関心が高まることもあり得ると考える。「自らの目で何か起こったのかを見ることで、何をおいてもこうした災害が二度と繰り返されぬようにするべきだということを理解してもらえるかもしれない」と話すのは地元ガイドの岡本たくとさん(ロイター通信)。月に二回、観光客グループの訪問を企画しているが、岡本氏のように考える人が、この中に果たしてどのくらいいるのだろうか。 一般にツアーを組む業者たちは「もはや問題はない。災害の集団的記憶を過去のものとし、2020年のオリンピックのお祭り気分に水を差さないようにしよう。原発再稼働を促そう」という公式見解に結果としてお墨付きを与えている。再稼働については、世論調査によれば半数以上の国民が反対しているにもかかわらず、実際、7月よりその方向に舵を切っている。 フクシマはヒロシマではない覗き見趣味とか記憶の継承といった「災害ツーリズム」への賛否両論はさておき、福島に関していえば、さらにもう一つ、不明な点がある。実際はそうではないのに、福島のこの事故は歴史の一コマだという印象をそれが与える点である。 フクシマはヒロシマではない。それは過去のものとなった歴史上の一ページではない。事故を起こした発電所の解体には多くの年月を要するし、除染作業の結果については満場一致には程遠いものである。そして再び事故が起きる可能性は過小評価されている。 甲状腺ガンの早期発見のために定期的に子供に検診を受けさせる母親たちにとって、悲劇は相変わらず日常のものであり続けている。しかし検査結果を待つ間の彼女たちの暗黙の不安は、被災地観光の客たちにはほとんど一顧だにされないのである。 冒頭写真はこちらのブログより転載
by michikonagasaka
| 2018-09-28 01:29
| 考えずにはいられない
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