序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2008年 06月 12日
雑誌「グレース」の仕事でパリへ。
インタビューの仕事はとりあえず無事、終了したのでほっと一息なのだが、今回は、タクシーの運転手とのトラブルに二度も遭遇(たった一泊二日の滞在中)。非常に不愉快だったので、まずはその顛末を簡単に。 最初の運転手はシャルルドゴールの空港から街中のホテルに向かうときの人。 まずはラジオでアフリカ系ミュージックを巨大ボリュームでずっと流し続けられるのに閉口。けれど相手は恰幅のよい、強そうなお兄さんだったので、文句をいって変に切れられても怖いと思ってじっと我慢。するとそのうち、彼は携帯をあれこれいじり始めた。スクリーンに見入っているときは当然前は見ていないわけで、車はぶれる、ブレーキの急踏みはしょっちゅう。一応、高速なんですけど・・・と、内心、かなりどきどきだったが、ここでもじっと我慢。そうこうするうちに彼は誰かと話したくなったらしく、画面をスクロールしてお目当ての番号にたどりつくとすぐに会話がはじまった。なぜか設定はスピーカーになっているので相手の声も私にはすべて丸聞こえ。ここで紹介するのも馬鹿馬鹿しい内容の会話が延々続き、しかもコネクションもあまりよくないらしく相手の女性はしょっちゅう「え?」「え?」と聞き返す。携帯電話の新規契約について、契約金がどうのこうの、機種がどうのこうの、というような内容なのだが、相手の彼女、おそろしく物分りが悪く、同じ説明を何度繰り返しても、ちっとも要領を得ない。 あ~やだやだ・・・と、私はひたすら耐えること約10分、いや15分。ようやくその相手とのお話が終わったかと思うと、次は別の友だち(らしき人)に電話して、たった今、話したばかりの「携帯電話の新規契約」のことを、その相手に説明しているらしい。「らしい」と書いたのには実は理由があって、なんと今回は、我が運転手君、アフリカの言葉(たぶん)でしゃべっているので、私には内容がわからない。しかしフランス在住も長いらしく、かなり頻繁にフランス語の単語が混ざる。「ケータイ」とか「契約」「基本料金」「オプション」といったキーワード(名詞)はフランス語で、それらをつなぐ動詞や形容詞部分は、お国の言葉。 とうとうそのお友だちとの会話も終わり、次に再びさきほどの彼女へ。お友だちとの会話の一部始終を彼女に話して聞かせ、ついでに「ところで今、どこ?」「え、オレ? オレは客を一人(私のこと)、君の仕事場の近くに降ろすんだけど・・・」みたいなことを、何度も何度も繰り返している。その段階で実は高速は終わり、一般道路に入っていたのだが、彼はそこで料金設定を変えるのすっかり忘れ(深夜料金と一般料金の区別があるように、高速料金と一般料金の区別もある)、私ももちろんそんなことには気づいていなかったのだが、高速を降りてかなりたってからやっと「おっとっと」という感じで億劫そうにメーターの料金設定ボタンを押していたので、あーあ、と私は無気力にため息をもう一つ。 そんなこんなで、不満は山ほどあれど、こわもての外観にすっかりびびって、何もいえない私。 さて、ようやくタクシーは無事、私の滞在するホテルにたどり着いたのだが、トランクに積んだ私の荷物を出すために、車から降り立った彼は、なんと、ズボンのベルトもチャックも全開状態なのだった! ひえーっ、それって何のつもりなわけ??? と、だが私は当然、見て見ないふりをするしかないのだったが、さすがに後味は非常によろしくない感じ。 ******* さてさて、二日目の今日。ホテルでタクシーを呼んでもらったのだが、約束の時間になってもそのタクシー、ちっとも現れない。苛立つ私に、近くを通ったお掃除のおばさんが、 「あ~ら、今日は交通機関の部分ストだから、タクシーもつかまりにくいのかしら」 といって首をかしげる。 ストね~。まあ、パリらしくてよろしいことで・・・。しかしたまに訪れる私にとっちゃあ、そんなもの迷惑以外のなんでもない。 「10分で着く」といわれていたのに、20分たち25分たつのに、そのタクシーは一向に現れない。とうとうホテルのレセプションの人にもう一度、問い合わせの電話をかけてもらうが、「もう間もなく着くはず」と、まるで蕎麦屋の出前みたいなつれない返事が返ってきている模様。 なんやかんやで結局30分後にようやくその車は登場した。 私をその車のドアまで案内したホテルマン、メーターを見るなり、ぎょっとして、運転主に 「なんで、すでにこんなにメーターが上がってるんだ?」 と、文句をいってくれるのだが、運ちゃん、涼しい顔で 「道が混んでたからね~」。 ホテルマンと運ちゃんとの押し問答はなお続く気配だったが、すでにアポの約束の時間を過ぎていた私は、そんなことはもうどうでもいいから、一分でも早く、私を目的地に連れて行ってという心境で、ともかく車に乗り込んだ。 「マダム、でもメーターはすでに15ユーロ(2400円)ですが・・・?」 不安げに訪ねるホテルマンに 「仕方ないでしょ、それがパリのタクシーってもんなんだから」 と嫌味の捨て台詞を残し、ともかくは出発。 ところがその運ちゃん、自信満々だったにもかかわらず、道を間違え、一方通行をぐるぐるたらいまわし状態になって、その間、メーターはさらに上がり続ける。そうこうするうちに、おそらくはホテルからの通報を受けたのだろう、タクシー無線の本部から運ちゃんに連絡が入り、どうやらメーターのいんちき(いんちきに違いない、もちろん)について、あれこれ文句をいっているらしいのが漏れ聞こえる電話の会話からわかる。 さんざん私をたらいまわしにした挙句、やっとのこと彼は地図を取り出し、目的地の住所を探し始めた。いい加減、頭にきていた私は、こちらの彼も相当立派な体格だったにもかかわらず、意を決して 「メーター、止めてくださる?」 と、やっとのことでそれだけ言った。 「オッケー、オッケー。心配なく。15ユーロでいいからね~」 明るくそういってのけ、やっと見つけた住所へと彼は再びハンドルを切るのだが、そんなときに限って目の前には「ごみ収集のトラック」が悠々と停まって、こちらは一歩も先に進めない状況。 これまたものすごく「パリ的」な状況で、約束の時間にはすでにかなり遅れてるし、なんだかほとんど泣き笑い状態で、ともかく私は 「もうここからは歩いていくから」 と、15ユーロきっちりを払って、車から飛び下り、あとはひたすら走りに走って、息も絶え絶えで目的地にたどり着いたのだった。(ちなみに15ユーロとしても、距離を考えればかなりぼられてる感じ) さて、この問題の運ちゃん二人は、偶然にも二人ともアフリカ系のお兄さん。 やれ飢餓だ、やれフェアトレードだ、やれダルフールの虐殺だ、やれエイズだ、と、日頃私はかなりまじめにアフリカ大陸の問題について考えたり、行動したりしているのだが、こういう現実(ほんと、礼儀も道徳心もあったもんじゃない。フランスならフランスの、手厚い社会保障に守られて、働く意欲もなければ誇りも持たず、ズルすることばかり考えて、その意味で人間としての尊厳からは程遠いところで、けれど暮らしに事欠くことはなく、まあ、いってみればのうのうと暮らしている移民組の彼らの姿、といった現実)に触れると、「ちょっと待てよ」という気分にもなろうというもの。 いや~、「高邁な理想」と、「あったまに来る個人的な現実」とのギャップを埋めるには、生半可な人道主義などでは歯が立たないなぁと痛感したことだった。 さて、そんなマイナスの経験はあったものの、今回は空き時間にちらりと立ち寄ったサンローラン本店にて、とても幸福なお買い物体験もさせてもらった。ムッシュ・サンローランが亡くなってまだ1週間ちょっと。20代の時分に「サンローランってカッコよすぎ」と信奉し、なけなしの収入をはたいて頑張ってスーツやらサファリルックやらを買ったことがとても懐かしく、なんとはなしに私なりの「オマージュ」を、というくらいのつもりで店に入ったのだが、とても納得のいくバッグとシャツを見つけ、えい、買ってしまえと、手にとったところ、 「マダム、本日からプライベートセールで、もちろん表示はされていませんが、すべては50パーセントオフですから・・・」 と、これまた見目麗しい男性店員にささやかれ、 「これもなにかの運命だわ」 と、思わず有頂天に。 タクシーの件などすっきり忘却の彼方で、勇んでクレジットカードを差し出した私。 ちなみに 「やっぱ、サンローラン、買うしかないですよね」 と、私と共に店に繰り出したS社プレスのMさんは、靴を二足お買い上げ。 同世代の私たち二人。 バブルを潜り抜けて来た魂は、いつまでたっても「物によって、消費によって、幸福感を得たい」という呪縛から逃れることができず、かといってそういう自分たちを別に否定するわけでもなく、こんなふうに一生、「自分へのご褒美」を買い続ける運命にあるんだろうな・・・と、買い物後のお茶タイムに意見の一致をみたのであった。 プラスマイナス、足して引いて、結局はややプラスだったかな、と思えた今回のパリ。 平和で静かで地味なスイスにさきほど戻り、「パリは好きだけど、でもやっぱりここスイスが私のおうち。私の暮らしの場」という気持ちを新たにしたところ。
by michikonagasaka
| 2008-06-12 06:34
| 身辺雑記
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