序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2008年 12月 11日
キッチン用品のウイリアムズ・ソノマといえば、いっとき日本にも店ができ、通販もあったのが、いつのまにか撤退したらしい。「世界のものがなんでも買える」印象の今どきの日本でも、意外に手に入らないものがあるというのは逆に新鮮な気がするが、それにしてもなぜ、ウイリアムズ・ソノマのような「受け入られやすそうな」店が日本に定着しなかったのかという疑問もわく。
そんなことをちらちら考えてみたのは、実はつい最近、お食事によばれた友だちが、もとウイリアムズ・ソノマのバイヤーだったことを知ったから。 ウイリアムズ・ソノマといえば、昔、アメリカのペンシルバニアに住んでいた頃(そういう時代もあったのだ)、ときどきNYに遊びに行くと、店をのぞいてはあれやこれやと買い込んだことを懐かしく思い出す。カリフォルニアの店だが、西海岸的なあの独特のカジュアル・シックのテイストは、非常に万人受けするというか、好感度がそこそこ高く、クオリティもまあまあ、そしてそこにはどこかヘルシーだったり、ロハスだったり、ニューエイジ的だったりする価値観が(嫌味でない程度に)ほの見え、とにかくキッチンや食卓を「とんがりすぎてないお洒落感」で満たすには、まさにうってつけのブランドだった。 そのウイリアムズ・ソノマで長年、バイヤーをつとめていた彼女エレンのお宅(現在はチューリッヒ在住)は、ウイリアムズ・ソノマをワンランク高級にしたようなお洒落なテイストにあふれた、心地よい空間で、そこで供されるお料理もまた、なんだかとても西海岸的(”シェ・パニース”につながるスピリットといえば、わかるかな?)。ご主人の仕事の関係で南アフリカ、香港、シンガポールなどに住んだエレンは、各地での思いが詰まった現地調達の家具やオブジェと共にこのチューリッヒにやってきて、そこで奇跡的に見つけた築100年の可愛い家をいい感じに大改装して暮らしている。子供が三人いるとは到底思えない、完璧な片付き方にも私は大いに感心。 バイヤー時代は、ヨーロッパ各国はもちろん、アジアや南アメリカなど、さまざまな土地へ「掘り出し物」を見つけに旅をしたエレン。そんな中、とりわけ印象に残っているのは、台湾と、そして日本の合羽橋だったという。台湾は、町自体はとにかくカオスで、美的な統一もへったくれもあったもんじゃないそうだが、一歩建物の中に入ったときにあっと息を呑む室内だったり、職人技だったり、暮らしの形だったりが広がっていることが何度もあって、そのギャップがものすごくエキサイティングだったそう。合羽橋では、とにかく一軒一軒の店を丹念にみて、「これは」と思ったキッチン雑貨(ザルとか、その他いろいろあったらしい)の問屋や製造元を突き止め、そこと直に取り引きをする道筋をたてたことが何度かあったという。 「日本との取り引きというのは、世界のどこよりも時間がかかったわね。なかなか決定が下されないし、やり取りの数も半端じゃなかった。でも、長い間待ってようやく商品が届くじゃない、そうするとね、とにかく完璧なのよね。クオリティコントロールからパッキングまで、とにかく完璧。この点でも世界一だった」 というわけで、ビジネス相手としては、時間はかかるものの「とても満足のいく相手」ということだったらしいが、逆に「もっとも難儀した相手」というのが、おうおうにしてフランスの会社だったとか。 「ラテン系だからって、一緒にしちゃだめよ。イタリアもスペインも、ポルトガルやブラジルでさえ、もっとちゃんとしてるもの。フランスは、とにかくトラブルが多くて、クレームをつけないといけないケースも最多。数がそろわないとか、破損してるとか、入荷の予定が大幅に狂うとか、いろいろ。でもね、仕方ないのよね、なんといっても圧倒的にお洒落なものが揃ってるから。取り引きしないわけにはいかないのよ」 ちなみに私の小さなフェアトレードの店「Fairy Tale」でも、フランスの会社との取り引きはとても多いが、確かに、他の国(私の場合は、日本、イギリス、デンマーク、スペイン、スイスなど)と比べて、マイナーとはいえ、トラブルが起こりがちなのはやっぱりフランスの会社。でも取り引きしないわけにはいかない。なぜならやっぱりお洒落だから。 ・・・というわけで、スケールは全然違うのだけれど、小売業者としての見解という点で私とエレンは一致。明日はそのエレンが私の店にお茶しがてらやって来る。昔買い集めた懐かしのウイリアムズ・ソノマ・グッズを見せてあげることにしよう!
by michikonagasaka
| 2008-12-11 05:27
| 身辺雑記
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