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序文にかえて
パリを皮切りに、アメリカ、ロンドン、そしてスイス等、国外が人生の半分以上になりました。多様な人々や文化や言葉に晒されるのがごく当たり前の日常。その中で色々なことを思ったり考えたりします。音楽と文学と哲学とお酒が、たぶん一番好きなことですが、昨今の国内外の状況には、いつまでもapoliticalでいられるはずもなく、ここでもときどき政治のことを書いたりします。
最新刊 「パリ妄想食堂」(角川文庫) 近著 「神話 フランス女」(小学館) 「難民と生きる」(新日本出版社) 「旅に出たナツメヤシ」)(KADOKAWA) 執筆依頼、その他、お問い合わせはmnagasakaアットマークbluewin.chまで カテゴリ
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2009年 02月 22日
Fairy Taleの店番をしながら、ヒマな時間になにをするかというと、これが実に読書に限る。時間がもったいなからと、原稿書きの仕事を少しでも進めておこうか・・・などと思ったのは、そもそも浅はかな考えで、「いつお客さんがくるやもしれぬ」という心のスタンバイ状態の中で、集中して考えたり書いたりというのは、思った以上に難しい、というか不可能なことであるのが判明。かといって、手だけ使って頭を使わぬ事務処理関係(支払い、伝票整理、発注管理といったアドミニストレーション作業)は、私の場合そこいらへんが無限にとっちらかって、これも「いざ、お客さんが来た場合」を想定すると、あまり気が乗らない。
ということで、私は店番のときは読書、という法則を定めたのだった。 売れない骨董屋の親父が、店の奥でずっと読書をしていて相当な教養の持ち主・・・みたいな話はよくあるけれど、金勘定を度外視すればこんな楽しく幸せな時間もない。東京でときどきお邪魔するギャラリー「桃居」のご主人も、そういえばいつも店の奥の机で本に読みふけってらしたっけ(こちらはちゃんと売れてる店、念のため)。 さて、今週のオープンハウス中の読書は、かねてよりその著作を楽しく拝読してきた青柳いづみこさんの「ピアニストは指先で考える」。ご自身も研鑽を積んだピアニストであり、また音大の先生でもあられるが、同時に文筆家としてもご活躍で、その頭脳明晰・感性豊か・表現自在・そしてときにユーモア満載のスタイルは、主に音楽がらみのテーマで遺憾なく発揮される。しかし音楽に端を発しながらも、話はけっこう普遍的な方向へ脱線、あるいはそれを示唆するところがあって、とりわけ、フランスのマルセイユで勉強された経験に依拠する「おフランス系の話題」の部分は、本当に「さぞ、そうであることよ」と得心がいくことばかりで、これが大変おもしろい。この書物は、もともと雑誌「ムジカノーヴァ」(音楽系の雑誌に違いないけれど、当然私自身はその存在も知らない)に連載されたものを中心にまとめたもの。まだ途中までしか読んでいないのだけれど、指の関節の話とか、椅子の座り方やそのこだわり方、舞台でのメイクや衣装の話まで、ピアニストの身体感覚を(ときに少々専門的なところにまで踏み込んだ形で)詳細にていねいに解きほぐしていて、ふーん、そうなんだ、と感心したり、机の前で(ピアノの前ではなく)「どれどれ」と、書かれている指の動きなんかを実際に試してみたり、とにかく楽しい。 「楽譜に忠実に」を教条としたノイエ・ザッハリッヒカイトの話から発展し、自分が書いた楽譜を自分で弾く場合、毎回、少しずつバリエーションをつけて弾いたというショパンとリストとでは、だがそのインプロビゼーションの目的が違っていたというようなこと。 ラフマニノフがしばしば輪郭のぼやけた音楽に聞こえるのは、弾き手が粒立ちのよくないタッチで弾き、それをさらにペダルでぼかすから。アイラインやリップラインを入れないメイクの顔をソフト・フォーカスで撮ったような。けれど、とあるクラヴサン奏者がラフマニノフを弾いたときは、なにしろひとつひとつタッチを切ってスタッカートにして弾くわけだから、あら不思議、複雑なテクスチュアが見事に解きほぐされ、音の連なりとそのからみあいがはっきり浮かび上がってきたのだった、という話。 ある時期、特にフランスでもてはやされたジュー・ペルレ(真珠をころがすような奏法)にまつわる話。 などなど、言葉好きの音楽愛好家(である私、と自分でいうが)には、ぞくぞくするような分析や観察が目白押しなのだ。 いつかこういう「明晰な言葉で説明のできる(しかも本人も弾かせたらとっても上手な)先生」にまたピアノを習ってみたいなと思う。 ちなみに副題のフランス語では「ピアニストは指先で考える」の代わりに「ピアニストは指を通して考える」となっているのも、なんか意味ありげで(とかいってないかもしれないが)、あれこれ憶測したくなる。 (以上、ひまな骨董屋のつぶやき)
by michikonagasaka
| 2009-02-22 02:08
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